2014年12月度例会「自動車用鉄鋼商品の開発とグローバル展開」

12月16日(火)恒例の日本記者クラブ会議室において本年最後の講演会が行われた。今回の講師は当社団代表理事の澤田靖士氏、演題は「自動車用鉄鋼商品の開発・実用化とグローバル展開」。鉄鋼業界ナンバーワンの新日鉄の副社長として同社技術陣を率いて、最大のクライアントである自動車業界の難易度の高い要求に応えて日本の鉄鋼の技術力を世界に誇れる水準に引き上げてきた歴史を語ってくれた。

 

まず冒頭に出席者に対して40年前に乗っていたと今乗っている車の大きな違いは何かという質問から始まった。錆びない、軽量化という講師の期待していた回答を得て、この二つの課題に鉄鋼業界がいかにして取組み、また地球環境問題を克服して優れた商品を供給し続けてきたかという展開で講演は進んだ。

 

錆びないという課題にはめっき技術の変遷が語られた。確かに今日本では錆が浮いた車は見かけることが無いが、他国を旅行すると床に穴のあいたタクシーに乗り合わすことがある。防錆技術が進み今や製品寿命は12年であるそうだ。

 

また、軽量化については高張力鋼板(ハイテン)の開発の歴史が語られ、まず燃費向上の為軽さが最優先であったが、人命が重視されるや強度を保つため重くなり、次に地球環境に対応するため軽量化の方向に進んだとの事である。

 

次に円高対応の為自動車各社が海外生産に転じた際、当初は全量輸出を行ってきたが、そのうち現調比率の向上の要請があり、鉄鋼技術の海外への移転が図られた。

 

締めとして今後の鉄鋼業界はどのようになるかという興味のある話題へ転じた。日本、欧米など先進国の国民一人当たりの鉄鋼使用量は600キロ仮に世界人口は60億人とすると36億トンの需要が見込まれる。現在世界の総生産量は16億トンであるので、まだまだ拡大する業界であり、厳しいクライアントに鍛えられた優れた商品を供給できる日本の鉄鋼業界は勝ち残れるとのコメントがあった。

(文責 杉野)