2017年6月度例会講演会「グローバル社会における日本伝統文化と易」

麻生美坱 氏

(当会会員、日本イノベーション融合学会専務理事、公益社団法人日本易学連合会会員)

 

麻生美坱さんは、中学卒業後、ウィーン国立音楽大学(オーストリア)へ留学(演奏科ピアノ専攻)、同大学修士課程中退後帰国。現在は、文化・芸術関連のドイツ語通訳、翻訳業に携わる傍ら日本易学連合会に所属し易経を学ばれ、また日本イノベーション融合学会に所属し日本伝統文化・芸道と易経の関係を研究し現代の企業経営に活かす研究をしておられます。

 

麻生さんの易経との拘りは、ウィーン留学時に世界の動きを肌で感じ、世界の文化を受容しながらどれにも完全に浸潤されず驚くべく混合(融合)を成し遂げている日本文化の根幹は何かとの思いからであった。

なぜ日本では多様な文化が共存できるのか。

日本文化を木に例えると、日本人の思想は、仏教が「幹」、儒教が「葉」、芸道・武道は「実」、民族宗教が「土壌」、神道が「根」、陰陽道・道教は「樹液」から成るとのこと。日本人の曖昧さ、複数の考え方でバランスを取る、仏教の中道・陰陽五行思想の中庸の精神などは、古事記神話の「中空構造」の考え方に既に現れており、また3つの神のバランスにより説明できる。

それは、「”言挙げ”しない」文化を生み出し、日本の持続可能な共存社会形成に貢献しているが、一方 知恵を意識化するのが苦手であり、日本式のアイデンティティのあり方を意識化する必要がある。

そのような中で、日本人は知らず知らずのうちに「易学」=「陰陽五行説」の世界に触れている。桃太郎、イザナギ、イザナミ神話、十二支などはその例であり、桃太郎は鬼門(艮)の方角に対峙する人門(裏鬼門=坤)の象徴で、猿(申)、鳥(酉)、犬(戌)を連れているのも十二支の方角と関係がある。

 

「易学」の世界観は陰陽五行(木火土金水)からなり、陰陽の根源である太極、八卦、六十四卦(「易経」)、「還暦」の元となる六十干支などを生み出した。なお、「陰」は悪いイメージと思われがちであるが、実は「陽」を心地良くより発展的に過ごすためには「陰」が必要であり、陰陽はバランスを取りながら森羅万象を形作っているとのこと。また、易学は「能」「茶道」「相撲」「弓術」などにも繋がっているとの興味深いお話を伺った。

「易学」は易=変化と言われ、変化の学問であり、易学の世界観を基本にした学問は東洋五術(命術、卜述、相術、医術(黄帝内経)、山術)に活かされている。

 

一方、西洋文化との関係においては、ユングによる「易経」の研究や、易学の世界観(哲学)を基本にしたとされる「孫氏の兵法」が欧米で戦術の教科書として研究されている事などが代表例である。その他、発想が非常に似ている例として、ダビデの星(六芒星)の意味と、易経の卦「地天泰」の意味の紹介があった。

 

最後に「易学」は、処世術、転ばぬ先の杖、時勢を見てチャンスを掴む など現代の日常生活、企業経営、事業戦略などに活かすことが出来るとのお話で締め括られた。

以上

 

(文責:田中資長)