2017年12月度 定例会講演「仮想通貨 はじめの一歩」

講師:斉藤勲氏(i SERVE 代表取締役)

講演テーマ「ビット・コイン」

(記録 井出亜夫)

 

貨幣・通貨の歴史は古いが、ビット・コインなるものの歴史は、10年未満である。この未成熟なコインは、今後様々な展開を示すだろうが、現状であってもその全容を短期間で把握するのは困難である。ここでは、講師の説明とともに下記によるウィキペディアによる概説をベースに、これが登場した背景とともにグローバル化された今日の市場経済システムに如何なる効用をもたらし、また、人間社会全体にとって如何なる意義を持ちうるか考えてみたい。

①   通貨の基本的機能は、決済、融資、送金、投資である。ビット・コイン登場の背景は、経済のグローバル化と所謂ICT(情報通信技術)の飛躍的発達であろう。

②   そのもとにおいて、既存金融システムは、大きな変更が求められているが、新事態に対し、決済、融資、送金、投資機能に関わる十分な対応が必ずしもなされていない。既存信用システムは多くの仲介者を有し、また、既得権をするがゆえに、ICTがもたらす可能性について、取引当事者にその成果、効用を十分には与えていない。また、国際取引において、国民国家を単位とする既存システムは大きな挑戦を受けているが、国民国家は、この対応に極めて鈍感である。ここに、経済のグローバル化とICTの進展をベースとしたビット・コインが誕生する必然性があるのだろう。

③   一方ビット・コインには、コイン強盗、コイン詐欺、投資詐欺等これを利用した不祥事が伴い、被害急増の事態も懸念されている。従って、いわゆるビット・コイン「コンシェルジュ」によるサポート、セキュリティー確保が不可欠であろう。

④   他方、現実の売買、経済取引の背後には、何らかの実体経済上の物の取引、役務の提供が存在するが、ビット・コインには、その実態を欠く現実があまた存在する、或いはその実態が皆無ですらある事実がありそうだ。市場経済のある意味での合理性、合法性を欠いた危険性を感ずる。最近における急激な価格高騰、下落が懸念材料だ。かつて、オランダのチュウリップバブルがあえなく崩れ、また、第1次大戦後のドイツの通貨インフレ等我々は人類の歴史において通貨に関わる信任喪失の事例を見てきた。

⑤   トマ・ピケティの「21世紀の資本」が問うグローバル経済下の不安定性に対し、ビット・コインは如何なる貢献ができるか、また、国連が採択した「2030年SDG(持続的発展計画)」に如何なる取り組みができるかという視点でビット・コインの効用を考える必要もあるのではないだろうか。

 

(注)ウィキペディアによる概要解説]

ビットコインはサトシ・ナカモト[8][9] (Satoshi Nakamoto) を名乗る人物によって投稿された論文[10]に基づき、2009年に運用が開始された[11]。

ビットコインシステムはピア・トゥー・ピア型のネットワークにより運営され、トランザクション(ビットコインの所有権移転: 取引)は仲介者なしでユーザ間で直接に行われる。このトランザクションはネットワークに参加しているノードによって検証され、ブロックチェーンと呼ばれる公開分散元帳に記録されていく。トランザクションでは通貨単位としてビットコイン (BTC) が使用される。このシステムは中央格納サーバや単一の管理者を置かずに運営されるので、米国財務省はビットコインを分散化された仮想通貨というカテゴリーに分類している。ビットコインは最初の暗号通貨とも言われるが、DigiCashやRippleといった先行システムが存在し、それを最初の分散化されたデジタル通貨として説明するのがより正確である。ビットコインは、この種のシステムの中では最大の時価総額を持つものである。

ビットコインはトランザクション処理作業に対する報酬という形で新規に発行され、ユーザ達が計算能力を提供することでトランザクションは検証され、公開元帳に記録される。このトランザクションの検証・記録作業はマイニング(採掘)と呼ばれ、マイナー(採掘者)はトランザクション手数料と新規発行ビットコインを報酬として受け取る。ビットコインはマイニングにより入手される一方で、他の通貨や商品・サービスと交換することもできる。ビットコインを送信するときにユーザはマイナーに任意の額のトランザクション手数料を払うことができる。

ビットコインは極めて低いコストでの決済(およびマイクロペイメント)を権力機関や特別な権限を持つ発行者無しで平均10分程度の待機によって可能にする。ノードから別のノードへの貨幣の移動は電子署名された取引で行われ、ピア・トゥー・ピア型ネットワーク内の全てのノードにブロードキャストされる。初期の通貨流通や、二重支払(英語版)の検知のためプルーフ・オブ・ワーク・システム(英語版)が用いられている。