3.11東日本大震災からの活動~何を大事に思い活動してきたか~

20226月 月例会講演録  うみねこ代表 八木純子さん(2022628日)

八木さんのプロフィール

石巻の保育園に20年勤務。 その後、子供の居場所づくりのため学習塾を主宰。

3.11後任意団体「ママサポーターズ」を立ち上げ、避難所での子供やママたちの応援、高齢者の入浴などの支援活動。

2012年に津波で残った実家の漁具倉庫を修復しコミュニティ。スペースうみねこを設立し、農園やカフェを経営。その間、様々なアイデアを商品化し、高齢者、女性、若者の雇用創出を通じて、災害で崩壊した地域のコミュニティ再生や経済に尽力。

熊本地震の際は、支援を受けるばかりでなく、支援する側になろうと、地元の人たちと協力。支援物資を送り、支援者と被災地を訪問。

 

F-1との関わり: 2019年9月地域おこし部会の第3回目東北スタディツアーのコーディネータ

ー。その後、東京での被災地活動報告会などへも参加。

2020年バレンタイン用イチジクチョコを部会メンバーが購入

20222月、八木さんの仲介で、漁師さんから直送の帆立と荒波牡蠣を購入。

 

【講演録】

Ø  大切にして活動してきたこと: ①震災で一方的にいただくだけだと、いろんな意味でおかしくなってしまうのでは? ②「本来働いてお金を得て、ほしいもの、必要なものを得る」という当たり前の日常をできるだけ早く戻すことが大事。との想いで、地域住民の方の心の自立も大切という基本的考えで活動を継続してきた。

Ø  震災による女川の状況:震災前1万人の人口が6千人になり、福島を除く東北全県中最も 人口減少率が大きい、人口減少、高齢化の地域。

Ø  震災後の活動目標はステージ毎に3つに区分され、それぞれ活動内容が異なる。

ü  避難所の時期 ⇒生きるための応援: 高齢者の入浴支援(自衛隊の風呂は足元不安定なため、入浴可能な個人宅に頼んだ)や小さな子供のいるお母さんの支援(保母の経験が活きた)。

ü  仮設住宅の時期⇒生きがい、仕事作り: 気持の安定を第一に考え、その一例として布草履作り。何をしていいかわからなくなった女性達とともに、布草履づくりを始めた(高白浜草履組合として現在最高齢94歳、平均82歳が作り手)。これまでの間に1万足作り、一人で2千足作った人もいる。当初は5ケ所、作り手は30名超だったが、現在は6名となっている。現在は1足2千円で販売。その半分が制作者にわたっている。初期の布草履は FM横浜のリスナープレゼントに採用され、その後グリーンコープ生協が販路となっている。生活クラブ生協からの要望もあるが待ってもらっている。常に限定数を超える注文があり、完売している。200足限定で1400足の要望があったこともある。

一方、家に籠っていた男性に何かできないかを考え、「海の養殖から陸の養殖へ」として、津波被害のあった家3件分を畑にし(土が蘇るまでは延べ1万人のボランティアが作業)、津波で残ったイチジクをもとに、イチジク関連商品、また、収穫時に重さの軽いものをと考え、唐辛子を栽培し商品化している。イチジクはあのアルケッチャーノ石巻店やパレスホテル東京のディナーショーの際メニューに使われた。さらに、男性達は3万個の夢玉つくり(シリアルナンバー付き)やお正月飾り作りで貢献している。

ü  夢ハウスでの活動:災害前28件の集落があった高白浜で、唯一残った八木さんの実家の漁具倉庫を補修し(延500人のボランティアの支援、武田薬品工業、JCB,宮城県復興支援助成金、クラウドファンディング、自己資金を元手に)、食堂、集まる場所、働く場所、日替わりシェフ、修学旅行等の交流・学びの場として利用している。

ü  女川の震災前と震災後を映像で紹介した(港の津波で被災した交番は震災遺構として残すか賛否両論があったが、中学生の署名により残すことに決まった)。

ü  小さな生業・生きがいづくりの為の商品例:基本的に在るものからリメイクしているのがほとんど。布草履、バスマット、コースター、お正月飾り、ゆめ玉、イチジク葉茶、唐辛子など。約10年の間で、ネーミングの大切さ(Papachan`s唐辛子⇒女川唐辛子⇒潮風唐辛子 時期とともに変更した)、パッケージの簡素化などを学んだ。

ü  組織の知名度:朝日、日経など全国紙、地方紙やTVでもガイアの夜明け、おはよう日本などでも取り上げられた。

ü  サンマなたい焼きは、キッチンカーでイベントに行き、女川をアピールできている。例えば田園調布双葉では文化祭で学生が、サンマなたい焼きを作って売っている。

Ø  復興住宅など⇒地域再生、仕事作り;新しい地域コミュニティづくりのため、地域の女性たちに、ワークショップを開き、人と人をつなげられるような活動。小商いができるような商品づくりをするなどグループ作りを行った。

Ø  今後の展開:

①ゆめハウスでの活動(ずっと続けるもの)。

②生きがい・やりがいつくり(小さな生業づくりは、作っている方がいる限り継続)。③地域伴走型支援(社会福祉協議会か住民に移行)。

④ひととの関わり、学生とのコラボ商品づくり、修学旅行の受け入れなどは継続する)。

Ø  2021年のチャレンジ:できることから。ひととの繋がりからコラボ商品を作った

ü  花の香り袋(うみねこ+雄勝ローズガーデン)

ü  木製鍋敷き(障害福利就労支援継続b型+うみねこ):業界の常識より高い手間賃を支払っている。

ü  ぺーパーウェイト(田園調布双葉∔地域高齢者)これは失敗。

ü  地域づくりの成果として、32地区のうち12地区で地域伴走型の活動の成果として、住民参加(写真撮影や被写体)で月別に地区ごとの写真付きのカレンダーを製作し、20213月に地域住民に配布した。

ü  2021年から20223月まで:学校や団体とコラボ商品を製作・販売:唐辛子味噌のパッケージを学生が考え、父兄や関係者が購入。卒業式で校長がウミネコとのコラボ商品開発プロジェクトは、学生の自主性の教育に役立ったと言及されたことは、誇らしかった。逗子の中学生も「自分たちも何か残したい」との考想いがあり、不要になったカレンダーからの封筒づくりを、学生達が女川を訪れ高齢者に教えた。コロナで外出できない高齢者達には、在宅でできる手仕事で好評だったが、販路に困り、逗子市長に相談したところ、募金活動を行い募金してくれた方たちに、お礼に封筒を渡した。集まった募金は作り手の方たちのコミュニティづくりに使われている。

Ø  2022年 八木さんの新規事業(EEEという名の合同会社設立):津波被害が出なかったため、被災者が転入して人口増加している石巻市稲井地区で、市場では規格外の野菜などを販売する店と、地域の人が集まれるスペースを6月にオープンした。コロナ禍で職を失った人やシングルマザーを応援できるビジネスとしたい。すでに高齢者や子供達が集まる場所になっている。

Ø  7月中旬以後、新規ビジネスの店舗修復のためにクラウドファンディングで資金を集めたいので、ぜひご協力をお願いします。

 

 

Ë  質疑応答:イチジク葉茶の成分分析は、ほかでも販売されているが、潮風にあたったイチジクの葉から作るお茶の成分は、埼玉のイチジク葉茶と比較してルチン、カルシウム、ナトリウムの含量が高かった。分析にはお金がかかるため大学の卒業研究として無料で行ってもらい、学会発表もされている。これに対し、阿紀氏からコメントあり、スポーツドリンクの可能性を検討する価値があるのでは?とのこと。さらに鳥海氏が伊藤園にあたってみるとのこと。